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ここ最近、現役大学生と、人材業界への就業を目指す若人から、「キャリアコンサルタント資格を取ろうと思うのですが、どうでしょうか?」という相談を相次いでいただきました。
この問いに答える時、私は言葉に詰まってしまうのだ。
詰まってしまう時点でどう考えているか察せられてしまうのだけど、正直な気持ちとしては、Twitterでも言ったこんな感じ。
学生や若い子から、
「人材業界に興味があるので、キャリアコンサルタント資格取ろうと思うんです!」
とキラキラした目で言われるの、
「出版社に就職したいので、文学部に進もうと思うんです!」
と言われたときと同じ気持ちになるんですが、大人の皆さんは分かってくれますよね?— みゆきち@育休中のキャリアコンサルタント (@miyukichi314) June 18, 2020
”大人”達からの反応も多かったので、関心ある方はリプ欄も目を通していただければ。
資格取得を勧めにくい3つの理由
大枠としては、費用が高い上に、就業転職には直結しにくいからなんですよ。
- 資格取得・更新の費用が高い(約30万〜)
- 資格よりも圧倒的に実務経験が優遇されるため、初手の足掛かりには不向き
- 先に資格取得すると、実務とのギャップが想定される
前提として、私は取得して本当によかったです。
しかし、正直なところ、「学生」の時や、「新卒」時代に取得を目指したとして、今と同じくらいの満足度や活用ができたかというと、私の場合は否なんだよな。
・キャリアコンサルタントを取得することで、どうなりたいのか。
・なぜ、キャリアコンサルタント資格を取得したい!と考えたのか。
あなたの話を個別に聞いていない中で申し訳ないんだが、十中八九、キャリアコンサルタント資格取得よりも、ずっと効果的な近道となる別の手段があるはずなんだよね…。
止めはしないけれど、今一度、資格取得の目的と効能は整理してほしいのだ。
資格取得・更新の費用が高い(約30万〜)
働いてても躊躇する値段です。
受験資格を得るには主に2パターンあります。
- キャリアコンサルタント養成講座の修了
- 一定以上の実務経験年数
キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかの要件を満たした方が受験できます。
・厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者(講習カリキュラムは別表に記載)
・労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験(5を参照)を有する者
・技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
・上記の項目と同等以上の能力を有する者
厚労省より引用
学生や若手の場合、受験資格を手に入れるためには、自ずと前者の「キャリアコンサルタント養成講座を受講する」一択になるんですよ。
で、この養成講座は厚労省が認定した事業所が運営する講座になるわけですが、まあ、平均30万で3ヶ月のスクーリングになります。
受験費用も、学科と実技合わせると4〜5万飛ぶので、他の国家資格と比較しても高いんだよね。
資格維持するための更新料も、結構なお値段するし。
一応、厚労省による「専門実践教育訓練給付金」対象で、最大70%オフになります。
しかし、この給付金の受給対象もまた、雇用保険に入って最短2年経過する必要があるのです。
以上より、学生や社会人1〜2年目は満額を支払わねばならず、補助対象にもならんのですね。
若いうちに30万円を使う場合、果たしてキャリアコンサルタント資格に使うのが適切かと問われると、もっと投資効果の高い自己研鑽は多いと思ってしまうのだよ。
あと個人的に、学生が取っておいたほうがいい「資格」の一番手って、運転免許だと思ってる。
資格よりも圧倒的に実務経験が優遇されるため、初手の足掛かりには不向き
じゃあ、これだけ時間とお金をかけて手に入れた「国家資格」だもん、めちゃくちゃ評価されると思うじゃないですか。
残念ながら、就職や転職には大して影響しないです。
これはキャリアコンサルタントが「名称独占資格」であり、「業務独占資格」ではないことに起因してるんですね。
名前の通りなんですが、「キャリアコンサルタントの”名称”を名乗れる資格」であって、なんと、「キャリアコンサルタントじゃないとやってはいけない仕事」というものが存在しないんですよ。
だから評価されにくいし、第一線で長年働いてるベテランの中には、腕と成果がものをいうんだからあんな資格に意味はないとまで豪語する人も、まあ少なくないです。
実際、取得した後、活用方法に悩む人も少なくありません。
で、学生や若手の人が、どんな瞬間に「キャリアコンサルタント資格を取ろう!」と考えるかというと、「人材業界にいきたい」という理由が多いみたいなんですよ。相談受けたパターンは全部これだった。
人材業界は、キャリアコンサルタント資格保持よりも、営業経験あったほうが十倍くらい入社しやすいです。
それは「キャリアアドバイザー」や「人材コーディネーター」と呼ばれる、転職や派遣業務を考える人に対して提案する仕事であっても、です。
目的に対する手段として、残念ながら多額のお金と時間を欠けた資格取得は、効能が薄いのだ…。
先に資格取得すると、実務とのギャップが想定される
人材業界に移るために、営業経験の重要性について述べました。
そうなんです。人材業界は、基本的に「営業職」で構成されてるんですよ。
カウンセリングやサポート、コンサルタントなどの名称を使ってはいますが、実務としては、「営業」です。
しかしながら、キャリアコンサルタント資格における養成講座〜資格勉強の中で、この営業要素ってほぼ触れられないんですね。
むしろ(私が養成講座を通して感じた中では)、営利企業である民間の人材事業と”キャリアコンサルタント”は一線を画すのだ、という空気がありました。
私は実務から入っているため、「それを全部守ったら、実務が回らん!」と叫びたい場面は多々ありました。
初回面談はたっぷり関係構築に使うとか、1回きりではなく4〜5回継続してとか、提案やアドバイスは控えるとか。
一方で逆の立場を想像してみるならば、「学んだことが、何一つ守られていない!!」と現場で叫ばれてしまうんだろうな、と思うわけです。
学ぶ内容も、資格の中身も、血肉にすべきことが多いんですよ。
それは本当に自信を持って言えます。
が、しかし!!
いわゆる「理想」と「現実」を両立させていくには、実務における腕とか折衷とかもまた必要で、純真な気持ちで資格取得を目指し、素直に内容を吸収し、真っ直ぐな思いで人材業界に入社すると、ギャップはどでかいだろうなと老婆心ながら口を出しそうになるんですね。ええ。
人材業界でのお仕事は、だいたい「営業」だよ。これを心に留めてくれ。
今じゃなくてもいいのでは
人材業界は、転職で行きやすい業界でもあります。
別業界→人材業界という門戸は、相当広く開かれているんですよ。
営業経験を見ることはあっても、メンバークラスならば経験業界はあまりみられない。
むしろ、特定の業界や職種に対する支援サービス企業では、人材以外の当該業界を経験している人を募集するポジションがあるくらいです。
その業界・職種に特有な問題や商習慣を把握しているからこそ、できる提案も多いですからね。
別業界→人材業界の門戸は広い一方で、人材業界→別業界の難易度は普通に高いです。
例えばですが、メーカーや金融やインフラあたりは、人材業界(に限らず異業界)経験から転職するのは難しいです。
まあ、だから結論としてはですね。
学生や社会人3年未満で、キャリアコンサルタント資格を取りたいと考えた場合、ぶっちゃけ、「今じゃなくてもいいと思う」と答えます。
せめて専門実践教育訓練給付金の支給要件に達してからにしよう。3割負担で受験できるし。
あと「学びたい」という観点ならば、各種キャリア理論家や、宮城まり子先生の著書など読むところから始めるのもいいんじゃないかな。
情報を確認した上で、選んでほしい
何度も言いますが、私自身は資格取得してよかったし、現場で感覚的にやってきたことを体系的に学べたことは大きな財産です。
更に、知らないことの多さや、資格取得したからこそ出会えた人、入れたコミュニティ、受け取れるようになった情報も多い。
実務や営業観点においても、学んでから・資格取得してからの方が、以前より上手くやれるようになったという自負もあります。
特に、他者(顧客・社内)との接し方において。
こういった資格取得者によるポジティブな声と、取得に係る金銭・労力・時間面での負担になる部分、そして厳しい目での「取得資格が自分の益になるかどうか」。
加えるならば、今取得しないといけないものなのか? 後からでも十分なものではないか? という問い。
これらを認識して、並べて検討した上で、受験するかどうかを決めて欲しいなと思います。
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